17.偽りの自分

会社では自分がゲイであることを隠し、ゲイの街では自分の本名を隠し、常に「自分を隠しながら生きている」状態がとても苦しくなった時がありました。

どんな時でも自分を隠している、じゃぁ一体いつになったら「自分らしく」生きられるの!?
そんな風に想いながら、もんもんとした日々を送っていました。

特に20代後半の頃働いていた会社は、全部で20名程の小さな会社で、みんないい人たちばかりで、人間関係が良好だったからこそ、「この人達に嘘を付き続けている自分」が嫌で嫌で仕方ありませんでした。

自分がゲイであることを伝えたい。
でも、言ったらみんなどんな反応を示すのだろう?

嫌わるだろうか?
拒否されるだろうか?
そうしたら、もうここにはいられなくなるのだろうか?

そんな心配ばかりが頭をよぎって、言うことはできませんでした。

次転職したら「自分のことを誰も知らない、全く新しい環境に行きたい。そしたら最初からゲイであることをカミングアウトしよう」そんな事を考えていました。

実際、次の会社は外資系で、入って早々にカミングアウトをした所、みな友好的に捉えてくれました。
(上司には言いませんでしたが、女性の多い部署だったこともあり、最終的には部内の7~8割の人にはカミングアウトをしていました)

その時はとても快適でした。

周りの人からしてみたら、カミングアウトしようがしまいが、私という人間に変わりはありません。
でも、「カミングアウトしていない自分」と「している自分」では、心の状態は全くちがいます。

常に「バレるんじゃないか?拒否されるんじゃないか?」と不安だった日々。
常に「自分は周りに嘘をつきながら生きている」と罪悪感で自分を責め続ける日々。

一方、そんな事から開放され、のびのびと過ごせた日々。
他人から見たら、全く違いは分かりませんが、本人にとっては雲泥の差です。

でも私はまだ良かった。
カミングアウトしても拒否されなかったから。

人によっては、カミングアウトしたことで、周りからいじめを受け、会社を辞める羽目になった人もいると聞いています。

父親には言わないほうがいい。
母親には言わないほうがいい。

みんな十人十色で、受け入れられた人、受け入れられなかった人、それぞれの話を聞きます。
そんな話を聞いているからこそ、「やっぱりカミングアウトするのは怖い」と思ってしまう人が大半だと思います。

私も、今回この仕事をするにあたり、ずっと悩んでいたことがありました。
それは「本名を出すか出さないか」。

ある有名な声優さんが、カミングアウトした際、こんな事を言っていたそうです。
「自分の兄弟が会社で働いていて、自分がカミングアウトすることで兄弟に迷惑が掛かるといけないから、その兄弟が定年で会社を辞めるまでカミングアウトを控えていた」と。

私も、本名を出してカミングアウトしたら、親や親戚に迷惑が掛かるのでは無いかと思いました。

別に有名人でも何でもないし、誰も気に留めないだろうと思っていても、今は情報が直ぐに流れるし、どんな人が見ているか分かりません。

中には悪意のある人が、わざわざ実家を調べたり、親戚を調べたりするかもしれない。
そんな時代だからこそ、本名を出すことについて悩んでいました。

でもある時気づいたんです。
「親や親戚に迷惑が掛かるのでは?」という心境の裏側にある本当の気持ちに。

人が「誰かの迷惑になるから…」と思う時、それはその人のことを本気で心配しているのではないと思います。

例えば有名人の場合、自分が何かをしでかして、親や親戚の家に取材陣が殺到したら「迷惑を掛ける」、だからそうならないようにしたい、と考えるのは自然だと思います。

でも結局「親や親戚に迷惑をかけてしまったという負い目」を感じるのか嫌なんです。
つまり自分が嫌な思いをしてしまうから嫌なんです。

有名人じゃなかったとしても、自分が何かをやらかして、親や親戚に連絡が行き、そこから「あんた、何やってんの!?」と自分に連絡が来るのが嫌なんです。

結局、人の心配をしているふりをして、本当は「自分が嫌な思いをする」事が分かっているから、だからそれを避けようとしているんです。

その事に気がついた私は、「じゃぁ甘えよう」と思うことにしました。

人は多かれ少なかれ、周りに迷惑を掛けて生きるものです。
誰にも迷惑を掛けずい生きてこられた人なんて、1人もいないはずです。

小さい頃から「周りに迷惑をかけない人になりなさい」と言われ、育ってきているので「迷惑をかけることは悪いことだ」と刷り込まれています。

でも逆の立場で考えたら…?
大切な人が、何かをやらかして、自分に迷惑を掛けたとしても、自分だったら「そんなの気にしなくていいよ。もっと迷惑かけていいよ。むしろ大好きなあなたのことなら面倒見させてよ」って言うと思ったのです。

私が迷惑を掛けてしまう親や親戚は、私が甘えたいと思う、大好きな人達です。
もちろん親・親戚だけじゃなく、周りにいる人達、みんな大好きで、大好きだからこそ甘えたい人達です。

私は小さい時から、「周りに頼ることなく、1人で生きていこう」と思ってきました。
だから上手く甘える方法を知りません。

助けてほしくても「助けて」と言えなかったしSOSを出すことができませんでした。
でも、これからはどんどん甘えたいと思っています。

どんどん「助けて!」と言って、どんどんSOSを出していきたいと思っています。
そうすることを周りの人も望んでいてくれていると思っています。

だからこそ、本名を出して、カミングアウトをして、迷惑を掛けるかもしれないけど、そこはあえて「甘えさせてください」と思いました。


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