05.幼少期の記憶

幼少期の時の思い出なんて数える程度しか覚えていないが、楽しかった事よりも寂しかった・悲しかった時の事の方が印象に残っている。

母は夜の仕事をしていたので、保育園時代、私は夜、知人の家に預けられていた。
今でも覚えているのは初めてその家に連れて行かれた日。

自分にとっては見ず知らずの人の家。
初めて会う人達の所に突然預けられる不安。

そこには年の近い子供がいて、一緒に遊んでいたので、その後は何も問題はなかったが、そこにどれくらい通ったのかもわからないし、一緒に遊んだ「楽しい記憶」は思い出せない。

ただ覚えているのは、初日の不安だった時の事だけ。

***

ある時、一度だけ大家さんの家に泊まった事がある。
大家さんは顔も知っている。

でも泊まるのはその時が初めて。
やっぱりこの時も不安でたまらなかった。

親にとっては子供を独り家に置いておくのが心配だから預けたのだろう。
でも私にとっては馴染みのない家に預けられるより、親がいなくても自分の家で過ごす方が安心できた。

何故ならそこは「我が家」だから。
待っていれば、必ず親が帰ってくる家だから。

きっとあの頃、不慣れな家に泊まる時に感じた不安は「もしかして自分は親に捨てられたのか?このまま迎えに来てくれないんじゃないのか?」という不安だったのかも知れない。

***

幼少期の悲しい記憶で一番印象深いものがある。

私はその日、昼寝をしていたらしい。
母はそんな私を家に置いたまま、買い物に出かけてしまった。

夕方になり目を覚ました私は、家で待つしか無かった。
日が沈みながら、少しずつ暗闇が迫ってくる。

暗くなるのが怖くて、部屋の電気をつけたいが、電気のスイッチに手が届かない。

どんどん暗くなっていく部屋。
一向に帰ってくる気配のない母。

不安と恐怖が襲いかかってきた。

そしてやっと母が帰ってきた時、私は声を上げて泣いた。

「どうして一緒に連れて行ってくれなかったの!?どうして独りにしたの!?怖かった!寂しかった!」と、母を責めるように泣きながら叫んでいたと思う。

あの時は、迫り来る暗闇に対する恐怖だと思っていたが、今思えば「捨てられてしまったのか?このまま帰ってこないのではないのか?」という恐怖だったのかも知れない。


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